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21時に帰って夕食を作り、洗い物を終えて振り返ると、夫はソファでスマホを見ている。明日の朝のゴミ出しも、切れかけの洗剤の買い足しも、気づいているのは自分だけ。同じように働いているのに、どうして私ばかり。そう思っても、口に出せば喧嘩になりそうで、今夜も黙って洗濯機を回す。
夫が家事をしない理由は、一つとは限りません。理由ごとに、変えやすいことが違います。分担を一度に全部決め直さなくても、家事を一つ「担当ごと」渡すところから始められます。
同じように働いているのに、どうして私ばかり?
仕事で疲れているのは同じなのに、帰ってからの時間の使い方がまるで違う。そう感じて「私ばかり」と思うのは、ごく自然なことです。家事には終わりがなく、やらなければ誰かが困ります。それを一人で抱えれば、疲れがたまるのは当たり前です。言い出せずにいるのも、関係を悪くしたくないからで、責める理由にはなりません。
一方で、夫の側には「やっているつもり」があることもあります。週末にゴミを出す。頼まれた買い物は忘れずにしてくる。夫から見るとそれで「分担している」ことになり、平日の夜の家事の量は目に入っていない。そういうすれ違いは、どちらかが悪いという話とは限りません。
土曜の朝、夫が「今日は俺が掃除機かけるよ」と言ってくれる。ありがたいのに、素直に喜べない。週に一度の掃除機と、毎日の夕食と洗濯と片付けが、同じ「家事」として並べられているように感じるからかもしれません。
その気持ちをそのままぶつけても、たいていは言い合いになります。どちらが多くやっているかを比べる前に、夫が「しない」のはなぜかを分けて見ると、話す内容がはっきりします。
夫が「しない」理由を5つに分ける

平日の夜、洗濯物をたたみながら「どうしてこの人は動かないんだろう」と考える。考えるうちに、怒りだけが大きくなる。理由を当てはめてみると、怒りの向け先が少し変わります。
- やり方を知らない一度だけ一緒にやる。手順を短いメモにして渡す
- 家事に気づいていない負担な家事のまわりだけ、細かい作業を書き出して見せる
- やる基準が違う二人で守る基準を一つだけ決める
- 帰りが遅い平日と休日で担当を分ける。朝にできる家事を渡す
- 自分の仕事と思っていない頼み方の工夫より、話し合いの場を作る
当てはまるのが一つとは限りません。いくつか重なっているなら、いちばん強いものから手をつけます。
洗濯を頼むと「どれをネットに入れるの?」と聞かれ、結局自分でやったほうが早い。やり方を知らない場合は、教える手間が惜しくて自分でやってしまうのがよくある流れです。ただ、それを続けるかぎり、夫は「やり方を知らない人」のままです。一度だけ一緒にやって、あとは任せる。洗濯機の横に手順のメモを貼っておけば、毎回聞かれずに済みます。
ゴミ袋の補充、洗剤やトイレットペーパーの買い足し、子どもの持ち物の確認。名前のない家事は、いつのまにか全部自分の仕事になりがちです。家じゅうの家事をリストにして見せる方法もあります。けれど何十項目もの一覧を作るのはそれだけで疲れますし、受け取る側には責められているように見えることもあります。書き出すのは、いちばん負担な家事のまわりだけで足ります。
たとえば夕食なら、献立を考える、冷蔵庫の中を確かめる、買い物をする、作る、食器を洗う、生ゴミをまとめる。「夕食を作る」の一言に、これだけの作業が入っています。そこが伝わると、夫に渡せそうな作業が見えてきます。
シンクに洗い物がたまっていても、夫は「まだ大丈夫」「明日まとめてやる」と言う。基準が違うときは、どちらが正しいかを決めようとすると平行線になります。「寝る前にシンクを空にする」のように、二人で守る基準を一つだけ決めます。ほかの基準は、いったん今のままでかまいません。
帰宅が22時を過ぎるなら、平日の夜に家事ができないのは本当です。それでも、朝や休日なら時間がとれることがあります。朝のゴミ出しと洗濯物干し、休日の買い出しと作り置き。時間のあるところに担当を移せば、平日の夜の負担が減ります。
「家のことは得意なほうがやればいい」と言われ、話がそこで終わる。「自分の仕事ではない」と思っている場合だけは、頼み方を工夫しても動きにくいものです。家事の分担そのものを話す場が必要になります。 次の章の準備は、そのためのものです。
話す前に、自分の側で決めておくこと
洗い物をしながら、つい「たまには手伝ってよ」と言ってしまう。「言ってくれればやるのに」と返されて、そこから言い合いになる。準備なしに話すと、そうなりがちです。話す前に、自分の中で三つのことを決めておきます。
- いちばん手放したい家事を一つ
- その家事を、どこまでやってほしいか
- いつ話すか
手放したい家事は、一つに絞ります。夕食や洗濯、お風呂掃除、ゴミの管理。全部を一度に話すと「何から」がぼやけて、夫には「全部いやだ」と聞こえます。一つに決まれば、話はその家事のことだけで済みます。
「やってほしい」の中身も決めておきます。毎日なのか、週に何回なのか。洗い物なら、食器を洗うところまでか、シンクの掃除や布巾を干すところまでか。終わりの形が決まっていないと、夫は「やったつもり」、自分は「まだ終わっていない」と感じます。そのすれ違いが、何度もくり返されます。
話すタイミングは、疲れている平日の夜と、喧嘩の直後を避けます。休日の昼に「家事のことで10分だけ話したい」と先に伝えておくと、夫も身構えずに聞けます。
希望を一つに絞って伝える考え方は、義実家に行きたくないときの「夫に話す前に決める3つと、伝え方の文例」とも重なります。帰省の話をしたことがあるなら、そのときの進め方も使えます。
責めずに家事を渡す一言
「手伝って」と頼むと、その場ではやってくれる。でも次の日には、また自分がやっている。「手伝う」という言葉には、主になってやる人が別にいる、という意味が含まれます。家事を一つ「あなたの担当」として渡すほうが、続きやすいことがあります。
担当ごと渡すときは、「何を」「いつから」を具体的に言います。
「平日の夜の洗い物、これからはあなたの担当にしてもらえないかな。私は夕食を作るところまでにしたい。」
やり方を知らない家事なら、最初の一回だけ一緒にやります。
「最初の一回だけ一緒にやらせて。そのあとは、あなたのやり方でいいから。」
やってくれたら、お礼を言ってかまいません。ただ、「手伝ってくれてありがとう」と言い続けると、その家事は「手伝い」のまま固まってしまう場合があります。
「洗い物、片付いてて助かった。ありがとう。」
難しいのは、やり方が自分と違うときです。お皿の向きがばらばら、フライパンの裏が洗えていない。全部言いたくなっても、伝えるのは一つだけにします。
「次は、フライパンだけ裏も洗ってもらえる?」
渡した家事の仕上がりは、ある程度は相手のやり方に任せる。 そう自分の中で決めておくと、言い合いの種が減ります。 毎回いくつも指摘されると、夫は「どうせ文句を言われる」と感じて、手を出さなくなりがちです。
何度伝えても変わらないときは、言い方より、話し合いの場そのものを作り直します。週末に時間をとる、紙に書いて渡すなど、場の作り方は下の「こじれる」章にも書いています。
今週手放す家事を決める
日曜の夜、来週の予定を見ながら、もう回らないと感じる。分担を決め直すには時間がかかり、そのあいだにも疲れは毎日たまります。分担の話とは別に、家事そのものを減らすことも考えられます。
一つは、夫婦どちらもやらない家事を決めることです。毎日かけていた掃除機を週2回にする。アイロンが要らない服を選ぶ。洗濯物はたたまずに、かごから直接使う。「ここまでやれば十分」の基準を一つ下げると、誰が担当するかで揉める家事そのものが減ります。
もう一つは、人の手以外に任せることです。食洗機や乾燥機能つきの洗濯機など、家電に任せられる家事があります。夕食を作らない日を週に一日決めて、惣菜や外食にする家庭もあります。家事代行や宅配の食事のように、外の手を借りる方法もあります。どれを使い、費用をどこまでかけるかは家計の話なので、夫婦で話して決めます。
自分ひとりの疲れが限界に近いなら、話し合いを待たずに先に減らしてかまいません。夕食を簡単にする、洗濯を一日おきにする。話し合いは、少し余裕が戻ってからでも遅くありません。
【タスカジ】家事代行を、一度頼んでみるなら
個人のハウスキーパーに家事を頼めるサービスもあります。タスカジでは、プロフィールを見てハウスキーパーを選び、掃除や洗濯、料理や作り置きなどを頼めます。1回の依頼は3時間で、料金とは別に交通費がかかります。使えるのは首都圏や関西、福岡など一部の地域です。料金と対応エリアを公式で確かめてから、夫婦で話して決めてください(2026年10月時点)。
話し合いがこじれる、怖いと感じるときは
家事のことを話すたびに、夫が不機嫌になる。黙り込んで、その日は口をきいてもらえない。それが続くと、話そうとすること自体がしんどくなります。夫婦だけで話すのが難しいときは、第三者に話を聞いてもらう方法もあります。誰に相談すればいいか迷うときは、悩みの種類ごとの相談先から選べます。
怒鳴られる、物に当たられる、家事のことで何度も責められる。そうしたことで怖いと感じるなら、話し合いの工夫より先に、相談窓口に連絡してください。 それが何にあたるかを、自分ひとりで決めなくてかまいません。DV相談ナビの「#8008」に電話すると、近くの都道府県の配偶者暴力相談支援センターにつながります。受付時間は、つながった機関の受付時間内に限られます。一部の携帯電話やIP電話からはつながらない場合があります。DV相談+は、電話 0120-279-889 が24時間受付、チャットは12時〜22時です(2026年10月時点)。いま身の危険を感じているときは110番へ。
離婚が頭に浮かぶこともあるかもしれません。そう考える自分を、おかしいと責める必要はありません。それだけ長いあいだ、一人で抱えてきたということでもあります。法律が関わる話で迷ったときは、法テラスのサポートダイヤル(0570-078374、平日9時〜21時、土曜9時〜17時)へ。内容に応じて、法制度や相談できる窓口を案内してもらえます。メールの問い合わせフォームは24時間受け付けています。
実家や義実家との関係も重なってしんどいときは、実家に帰りたくないときで、親との距離の取り方を書いています。
よくある質問
今夜、いちばん手放したい家事の名前を一つだけ、紙かスマホのメモに書いておく。夫に話すのは週末でかまいません。名前のついた家事は、もう「なんとなく私がやっているもの」ではなくなります。







