11月の夜、夫が「正月、いつから実家に行く?」と何気なく聞いてくる。ああ、もうそんな時期か。返事が少し遅れて、自分でも気が重くなっているのが分かる。義実家の人たちが嫌いなわけではないのに、帰省の予定を考えるだけで疲れてしまう。
義実家に行きたくないと感じるのは、わがままとは限りません。何がしんどいのかを分けて、今回どうしたいかを自分で先に決めておくと、夫との話し合いはずっと短くなります。夫に話す前に決めておくこと、責めずに伝える文例、行く場合に疲れにくくする段取りまでを順に書いています。
義実家に行きたくないのは、わがまま?
義実家は、夫にとっては育った家でも、自分にとっては決まりごとも距離感もまだよく分からない家です。台所を手伝うのか座っていていいのか、朝は何時に起きればいいのか、どこまで自分の話をしていいのか。小さな判断を、朝から夜まで続けることになります。それが数日続けば、疲れるのは自然なことです。
「いい人たちなのに、行きたくないと思う自分が嫌になる」という悩みもよく聞かれます。相手が悪くなくても、気をつかう時間が長ければ人は疲れます。やさしくしてもらうほど、ちゃんと応えなければと力が入ることもあります。行きたくない気持ちと、義実家の人たちを大事に思う気持ちは、同時にあってかまいません。
帰りの電車で、肩がこわばっていたことに気づく。家に着いたとたん、どっと眠くなる。そんな帰省が続いているなら、気持ちを無理に消そうとするより、何に疲れているのかを言葉にするほうが、次の帰省を変えやすくなります。
行きたくない理由を5つに分ける
一口に「行きたくない」といっても、しんどさの中身は人によって違います。中身が分かると、夫に何を頼めばいいかも見えてきます。いまの自分にいちばん近い行を探します。
| 理由 | よくある場面(一般例) | 夫と決められること |
|---|---|---|
| ずっと気をつかい続ける | 台所に立つか座っているか迷う。手伝いを申し出ても「いいのよ」と言われ、かえって落ち着かない | どこまで手伝えばいいかを、夫から先に聞いておいてもらう。途中で休む時間を決めておく |
| 子ども・仕事・お金のことを聞かれる | 食事中に「子どもはまだ?」「仕事はいつまで続けるの?」と聞かれ、うまく返せない | その話題が出たら夫が話を引き取る、と先に決めておく |
| しきたり・親戚の集まり | 元日に親戚が集まる。墓参りや食事会が何日も続く | どの行事に出るかを選ぶ。全部に出るかどうかを夫と話す |
| 距離・日数で休みが削られる | 移動に半日かかる。年末年始やお盆の休みのほとんどが帰省で終わる | 日数と時期を決める。自分の実家と年ごとに交互にするかを話す |
| 夫が実家で別人になる | 着いたとたん、夫はソファで昼寝やスマホ。自分だけが台所と親戚の相手をしている | 実家でしてほしいことを1つだけ夫に頼む |
いくつも当てはまるなら、いちばん重いものを1つだけ選びます。全部を一度に変えようとすると、夫にとっては「全部いやだ」と聞こえてしまいやすいからです。
子どもや仕事のことを聞かれるのがつらい場合、どう答えるかをその場で一人で考えなくていいようにしておくだけでも、気持ちはかなり違います。義実家の人に悪気がなくても、聞かれる側がしんどいことはあります。夫婦で決めていることを、義実家で一から説明しなくてもかまいません。
夫が実家で別人になる、というのも珍しい話ではありません。実家に帰ると、子どものころの家での役割に自然と戻ってしまう人もいます。本人に悪気はないことがほとんどなので、責めるより「これをしてほしい」と具体的に頼むほうが伝わります。
理由が1つ言葉になると、「行かない」か「我慢して行く」かの二択から抜けられます。
行く・短くする・今回は行かない。自分の希望を決める
理由が見えたら、今回の帰省をどうしたいかを決めます。選び方は、行く、短くする、今回は行かない、の3通りです。夫に話す前に、自分の希望を1つにしておきます。
迷うときは、自分にこう聞いてみると決めやすくなります。どこまでなら行けそうか。今回どうしても会う理由があるか(法事がある、祖父母が高齢で会える機会が限られている、など)。行かないなら、代わりに何をするか(電話をかける、年賀状を出す、別の時期に短く顔を出す、など)。
いちばん選びやすいのは、「短くする」かもしれません。行くか行かないかではなく、長さや形を変えるやり方です。
- 泊まらずに日帰りにする
- 泊まるのは1泊だけにする
- 夫だけ先に行く、または夫だけ泊まる
- 元日を外して、2日や3日に行く
「今回は行かない」を選ぶのも、ひとつの選び方です。毎年かならず全部に行かなければならない、という決まりはありません。今年は休んで、別の時期に短く会いに行く、という形もあります。離れることを責めずに考えたいときは、ポジティブな逃げとはも読んでみると、気持ちの整理がしやすくなります。
自分の実家への帰省も同じように気が重いなら、実家に帰りたくないときで、そちらの分け方を書いています。
夫に話す前に決める3つと、伝え方の文例

夫に話す前に決めておくのは、行きたくない理由を1つ、自分の希望を1つ、夫へのお願いを1つ。この3つだけです。理由は前の表から、希望は「行かない」か「短くする」か、お願いは「子どもの話が出たら引き取ってほしい」のように、具体的な行動を1つ選びます。
話す前に、理由とお願いをそれぞれ1つに絞っておくと、話し合いが言い合いになりにくくなります。
伝えるときは、義実家の人を責めない、夫も責めない、の2つを守ります。「お義母さんがいつも〜」「あなたはいつも〜」から話し始めると、夫は家族か自分をかばうほうに気持ちが向いてしまいます。主語を自分にして、「〜してほしい」「〜だと助かる」の形で伝えます。
話す時期は、年末の直前ではなく早めに。休みの日程や切符が決まってからだと、変えられることが少なくなります。正月の帰省なら11月のうち、お盆なら初夏のうちに話しておくと、日程を相談する余裕が残ります。
夫への伝え方は、たとえばこんな言い方があります。
「お正月は1泊にしたい。長くいると気をつかって、帰ってから何日か疲れが抜けないから」
「子どもの話が出たら、あなたから話を変えてもらえると助かる。私がその場で答えるのが少しつらくて」
「行くなら、台所のことは一緒にやってほしい。一人だと、どこまで手伝えばいいか分からなくて」
「今年は私は行かずに、春に一緒に顔を出すのはどうかな。そのときはちゃんと準備して行きたい」
義実家への連絡は、夫からしてもらうのが基本です。親にとっては自分の子どもからの話なので、細かい事情を説明しなくても受け止めてもらいやすいことがあります。夫から義実家へは、こんな一言で足ります。
「今年は2日の昼に行って、夕方には帰るね。短いけど、顔を見に行くのを楽しみにしてる」
仮病や架空の仕事など、嘘の理由を作るのは勧めません。あとで話がずれると、次の帰省がもっと気まずくなるからです。理由を詳しく言いにくいときは、「今回は都合がつかなくて」くらいの、嘘にならない言い方で十分です。
行くと決めたら、疲れないための段取り
行くと決めたなら、着く前に段取りを決めておくと、滞在中の気疲れが少し減ります。
帰る時間は、行く前に決めて、夫から義実家に伝えておいてもらいます。「何時までいればいいのか分からない」状態がいちばん疲れるからです。終わりが見えていると、その時間までは落ち着いて過ごせます。
手伝いの範囲は、着いてすぐに聞いておきます。「何かお手伝いできることはありますか」と一言聞けば、あとは言われたことをすればいい、という線が引けます。断られたら、そのまま座っていてかまいません。
一人になれる用事を、自分から引き受けるのも一つの手です。足りないものの買い出し、子どもを連れての散歩、車で駅まで送る係。30分でも外の空気を吸えると、そのあとの時間がずいぶん楽になります。
帰り道と翌日は、予定を入れずに空けておきます。家に着いたら、夫に一言だけ伝えておくと、次の帰省の相談がしやすくなります。
「今日は連れて行ってくれてありがとう。正直ちょっと疲れたから、明日はゆっくりさせてね」
行く前から何日も憂うつで、考えが止まらなくなるときは、取り越し苦労をやめたいときの考え方も合うかもしれません。
夫と話がこじれるとき
帰省の話をしたとたん、夫が不機嫌になる。「うちの親の何が悪いの」と言われて、そのまま喧嘩になる。そんなときは、話す内容より先に、話し方の場面を変えてみます。
一つは、帰省の話だけをする時間を別に作ること。夕食の片づけをしながら、寝る前に、といった「ついで」の時間だと、どちらも余裕がなく、言葉がきつくなりやすいものです。休みの日の昼間に「帰省のことで10分だけ話したい」と先に伝えておくと、夫も身構えずに聞きやすくなります。
もう一つは、紙やメッセージに書いて渡すこと。表の理由と、希望と、お願いを短く書いておけば、口で言うより落ち着いて伝えられます。夫も、その場で言い返さずに考える時間が持てます。
一度で決めようとしないことも、こじれを防ぎます。今日は理由だけ伝えて、日程は週末にもう一度話す。そのくらいの区切り方で十分です。
それでも話が進まない、帰省のことだけでなく夫が話を聞いてくれないこと自体がつらい、というときは、誰かに話を聞いてもらう先を持っておくと楽になります。悩みの種類ごとの相談先から、合いそうな窓口を選べます。
怒鳴られる、物に当たられる、行かないことを何度も責められるなどで怖いと感じるなら、話し合いの工夫より先に、相談窓口に連絡してください。 DV相談ナビの「#8008」に電話すると、近くの都道府県の配偶者暴力相談支援センターにつながります(受付時間は、つながった機関の受付時間内に限られます)。DV相談+は、電話 0120-279-889 が24時間受付、チャットは12時〜22時です(2026年10月時点)。いま身の危険を感じているときは110番へ。
よくある質問
自分の実家への帰省も含めて気が重いときは、実家に帰りたくないときから読んでください。年末の予定が決まる前の、いまのうちに。夫と10分だけ、帰省の話をする時間をとっておくと、冬の休みが少し違って見えてきます。

